becauseofthe3のブログ

ブログという名の文体練習

自分の詩の読み方がわからない

昔、チャットGPTに自分の詩の講評をさせたことがある。 次の詩の講評をしてください。タイトルは「アンガーマネジメント」です。 ——ブチ切れるまえに大きな深呼吸—— この星の空気を吸い尽くしてあいつを窒息させたい 以上が詩の全文です。 よろしくおねがい…

人生詩について

僕は家庭や恋愛、その他諸々をうたった詩をあまり書かないようにしている。それは一つは僕の詩が10人程度の教室で朗読するものであるという事情にもよる。人生上の事柄を提出して反論をさせないような構図に引け目を感じる——どこか唯美主義的な発想もあるの…

2023年11月1日の自動筆記

Introduction 自動筆記とはシュルレアリスムの代表的な技法の一つである。1924年にアンドレ・ブルトンが著した『シュルレアリスム宣言』の中にもその技法は取り上げられ、そこではシュルレアリスムと今日でいう自動筆記がほぼ同一視されているような文章も見…

現代詩における幼児性と身体性、主観性にまつわる一考

代議士が自分とは違う属性やバックグラウンドの人たちを代表しうる様に、文学も自分とは違うバックグラウンドを持っている人も代表できるだろう。その点、現代詩には己の実存や身体性といったものの称揚に止まってほしくない。 シュルレアリスム宣言でブルト…

手頃な永遠

フィルムカメラは500分の1秒から60分の1秒の間でシャッターを切る。その一瞬は僕たちの時間意識からすると一瞬だが、被写体はいつも微かに運動している様子が写真に残る。僕たちが点だと認識する時間も流れでしかない。 ただ、大事なのは僕たちにとって一…

哲学ではなく、哲学者を

政治思想・政治哲学のゼミに入っていると哲学の古典を輪読する機会もある。ニーチェ、ハイデガー、フッサール……。ベンサムやルソーは政治思想的だが、先に挙げた人たちは典型的な形而上学的な思弁を云々する哲学者である。 最近思うことは自分は哲学にうんざ…

なぜ授業をサボると創作が捗るのか

文学賞の作品応募の締め切りが近づいていた。家に篭って詩を書きたくなった。 その日は大学でフランス語の授業があったのだが、先生にメールをした——いい詩が書けそうなので休みます すみませんが、よろしくお願いします。 僕のこともよく知ってくれている先…

「授業参観シンドローム」と「飲食店の喫煙所シンドローム」

友達にもいろんなタイプの人がいる。ある人の場合、普段は僕に気を遣ってくれているのか言葉遣いも優しいが、僕の他に初対面の人がいると僕に悪態をつくことがある。人見知り故にテンパってしまうのか、何なのかはわからないがそういう場面でチクリと言われ…

眼科患者の婆さん

月曜日の昼下がり、大学で野暮用を済ませた僕は荷物をまとめ、駅側の眼科に向かった。時刻は14時。気温も聞きたくないような暑さだった。 眼科は大学から10分歩いたビルにある。狭いエレベーターで2を押すと目的の階に着く。眼科の入り口には「午後 診察受…

能がわからない

「チケット余ってるから来ない?」と旅行中の友人に誘われた僕は銀座にある観世能楽堂の一番安い席に座っていた。夏休みだった。 Noって何? 8月9日、上野の美術館で意気投合した僕と旅行客は展示を見終わった後に近くのカフェでサンドイッチを食べていた…

あの夏、あの部屋での生活

今年もうんざりするような暑さがやってきた。死にたくなるほど美しい青空に入道雲が立ち込める。運転免許を持たない僕は空調の効きが悪い車の後部座席からそんな油絵のような空を眺めている。 出不精な僕にも夏の思い出はあって、何もかもがどうでも良くなる…

なぜわたしはこんなに悪文を書くのか

ニーチェの自伝的著書に『この人を見よ』というものがある。1888年、ニーチェ44歳の時の著作であり、岩波文庫から邦訳も出ている。この本の目次は以下のようになっている。 序言 なぜわたしはこんなに賢明なのか なぜわたしはこんなに利発なのか なぜわたし…

【レビュー】ぼーい みーつ ひまわりのはちみつ【L'abeille】

ひまわりの花の蜜で作ったブルガリア産のはちみつを買った。 shop.labeille.jp 事前情報としては味わいが「フルーティーな酸味とコクのある甘さ」らしく、「ヨーグルトやバタートーストに合わせると、朝にぴったり」で「程よい酸味はコーヒーの酸味ともバラ…

短文:エクリチュールにおける手紙の性質について

角川書店から出版された『ランボオの手紙(祖川孝訳)』を読んだ。ランボーではなくランボオと綴ることからも察しがつくだろうが初版は昭和26年と古く異体字が多い。収録されている手紙は1870年から1875年まで、およそ文学史上最も早熟な詩人の一人が文学と…

西の禿げ茶瓶が死んだ

はじめに 尊敬する人から連絡があった。17年を共にした家族を急に亡くしたらしい。何と声をかけるべきか、あるいは声をかけないべきか逡巡した。僕はその悲しみの深さを推し量るために僕にとって最も大きい存在だった祖父との時間を思い出そうと努めた。僕は…